バカナビの壁。
【メルマガコラム】2003/12/05
ウチの車についているカーナビは、以前からカワサキにケンカを売っている。
横浜市にある自宅でエンジンをかけると、画面は千葉の木更津沖の海上を指す。
そのままどこかに出かけると、画面上では東京湾をジャブジャブ航海する。水陸
両用車じゃあるまいしっ(怒)と、どうにかして正確な位置を表示させようと
するのだが、ヤツは頑として多摩川以西(すなわち神奈川)を表示しようとしない。
横浜郊外の田舎道を走っていたら、画面上はお台場のフジテレビ社屋正面を
指していた、なんて時もあった。川崎で渋滞に遭っても、ヤツは皇居周辺の
渋滞情報を映しているので、役になんか立ちやしない。このカーナビ、オットに
至っては「どうせ合っちゃいないから、もう最近見た事もない」と言うほど
「信頼度が高い」ワケだ。
しかし、そんなバカナビも、昔はきりっとして気も利く、賢いヤツだった。
何がヤツを堕落させたのか……車はドライバーに似るって言うしなぁ、アタシの
アバウトさが感染(うつ)ってしまったのかしらん……と、失意のカワサキ。
ところがバカナビは、天気が良かったり機嫌が良かったりすると、半年に
一回ほど、何かの拍子に正確な位置を表示したりすることもある。そんなときは
「よくやった!でかした!やればできる!」と絶賛する。「このまま行って
くれれば……」と期待もする。そして、翌日にはまた木更津沖に逆戻り。
でもいつかはきっとこの子も……と期待を繋(つな)ぐのである。
まさに出来ない子を持った親の心境。褒めて褒めて、がっかりしてもまた
見守って……。期待をしていなければしていないほど、うまく出来た時の感動も
ひとしお。そう思えばこのバカナビも「バカな子ほど可愛い」なんて思えてくる。
というわけで、「バカの壁」ならぬ「バカナビの壁」は多摩川である。
いつか彼にもブレイクスルーがあるのではないかと、ささやかに期待する
親心であった。