カワサキ妊娠ジャーナル 3

【メルマガコラム】2004/01/28

「体育会系妊婦たち」

 夢見たのは、1度目の出産時にはできなかった「楽しい妊婦(らしい)ライフ」。
 それにはまず、憧れのマタニティースイミングとやらをしてみむと、スイミング
 クラブの門を叩いた。

 きっと、うら若い妊婦たちが更衣室で水着に着替えながら、
 「そのマタニティードレス、ステキ!どこで買ったの?」だとか、
 「お腹が張って、赤ちゃんが心配……」「大丈夫よ」とか言うんだろうな〜。
 せいぜいが水にチャプチャプ漬かって、マタニティービクスとか何とかやって、
 終わったら「お茶しましょうよ〜」とか誘い合っちゃったりするんだろうな〜と、
 ちょっと上品系女子校の放課後のクラブ活動みたいな、桃色の世界を想像して
 「うへへ」と照れていた。

 冗談じゃない。現実は違う。妊婦なのに、毎回1km泳がされるのだ。
 「はーい、じゃぁウォーミングアップでクロール、往復3本行きまーす」
 「次、ドルフィンキックだけで息継ぎなし、往復3本ねー」
 「じゃ、この辺でバタフライ、往復3本、よーい」と、嬉しそうなコーチ。
 妊婦なのに……。もはやマーメイドではない、ジュゴンやトドなのである。
 身体も重けりゃ腹もデカイ。肺活量だって落ちている妊婦たちに、
 1kmは酷である。溺れる。

 バタフライを終えてプールサイドに上半身を預けて突っ伏す妊婦の背中に、
 「はい、じゃぁ次、お待ちかねのマタニティービクス行きまーす」の声。
 始まるのは、妊婦生活ではありえないほどの速度で刻まれるマタニティービクス。
 あまりの哀れに、我ながらそんな姿を客観視できない。

 「今日は新人さんがいたのでー、少し軽めの内容でしたー。次回はしっかり
 やりまーす。じゃぁ、お疲れ様でしたー」
 無言で更衣室に上がるジュゴン……じゃなかった、妊婦たち。
 「マタニティーでこんなに泳ぐとは思わなかった……」
 「人生で一番泳いでると思う、今」と、力なくつぶやきながらマタニティーウェア
 に身体を押し込み、「お茶」なんて夢にも思わないほどへとへとの足をひきずって
 静かに解散する。

 そう、それに、現代の妊婦たちはうら若くなんかないのだ。みんな30代。プールに
 入るからって、スッピンになんかなれない現実。つい薄くファンデーションを
 塗り、眉だけでも書いてしまうお年頃。ラブリーピンクの世界は遠い。