スタアへの道!? (NHK社会科見学編)

【メルマガコラム】2005/04/19

先号で、「TVに出て喋るべし」という国営放送からのお達しを受け、泡食って
 大騒ぎしたカワサキ。オットに「山」とイヤミを言われながらも巨大な
 妊婦姿でNHKへ向かった、「すくすく子育て」収録当日。

 実はその前日、あまりに緊張するカワサキを哀れんで、友人Sちゃんと
 Mちゃんが、すんばらしいアドバイスを授けてくれた。
 「バカに徹しろ!カッコつけるな、背伸びするな、メルマガ5本分くらいの
 ネタを持ち帰るつもりで楽しんで来い!」よっしゃ。行ってきますわ〜。

 午後3時に渋谷のNHK放送センターへタクシー入り、と指令を受けていたにも
 関わらず、カワサキが走りこんだのは午後4時。地元で捕まえたタクシーの、
 どこか沢田亜矢子の元夫兼マネージャーに似た運転手さんが、
 「こっちから渋谷に行くの、初めてなんですよ……」
 と、自信なさそうに取扱説明書を読みながら運転席のナビに「NHK」と入力した
 瞬間にイヤな予感がしたのだが、既に緊張絶頂のカワサキに、運命に
 抗(あらが)う気力はなかった。案の定、首都高大渋滞で、大遅刻である。

 事前に「遅れます」と連絡を入れていたものの、ゲストが収録に遅れるなんて
 言語道断。しかしNHKの皆さんは優しかった。教育番組だからなのか、控え室の
 雰囲気も極めて和やかで、誰も大声を出したり、あくせく走り回ったりして
 いない。あちこちに頭を下げるカワサキに、番組でご一緒する恵泉女子大の
 大日向雅美先生がにこやかに「よろしくね」と声をかけてくださった。
 NHKのスタッフさんに案内されて、まずはメイクルームへ。

 「あ、もうしっかりメイクされてますね」と、メイクさん。
 ええ、あの、自主リハーサルしてまして……。
 「髪もまとまってますね」
 ええ、自主リハーサル……。
 「じゃ、頬の辺りだけ足していきますね」
 おぉっ、妊婦特有のシミ・ソバカスが消えていく。チョコチップ顔が卵肌へ。

 気を良くしたカワサキは、好奇心を抑えきれず、さり気なーくメイクさんに
 尋ねてみる。
 「女優さんで、メイク前と後が全然違う方って、いらっしゃいますか」
 「いえ、みなさん元々とてもおキレイですよ」
 さすがNHK、優等生であります。
 「あ、でも黒木瞳さんは……」
 来た来た来たっ!!!!瞳さまがどうかしましたかっ!!!!
 「メイク前から別格に輝いてました」
 そうかぁ〜〜、やっぱりそうですかぁ〜〜。脱力。
 実はあの方はアンドロイドで……とか、そーゆー展開でもびっくりしなか
 ったんだけどなぁ。まぁいいや。

 顔をいじられながらバカ話を続けるカワサキのメイク建設現場に、スタッフ
 さんが呼びに来て、「そろそろスタジオの方へ〜」と連れて行かれる。
 スタジオは煌々と照明が付き、演出さんやカメラマンさん、大勢のスタッフ
 さんがスタンバっていた。4月からの新レギュラー、天野ひかりさん、そして
 つるの剛士さん(元ウルトラマン)とご挨拶をして、席に付く。

 さて台本を手に、リハーサル開始であります。でも一言一句書いて
 あるわけではないので、コメントはその場で大体の方向性を守りながら
 アドリブで出さなければいけません。レギュラーのお二人はもちろん、
 大日向先生も、素人カワサキがたまげるような機知でもって時間内に
 コメントを入れ込んでいくのは、さすがプロのお仕事ぶり。

 天野さんはキャスター出身だけあって、言語明瞭、時間感覚がバツグン。
 相手のコメントを聞きながら、頭の中で残り時間を計りつつ、ご自分の
 相づちや返答を随時変えて繰り出す。つるのさんは現場のムードメーカー
 で、状況に合わせて聞く人をふっと笑わせるようなコメントを挟む。休憩
 時間には、1歳になったばかりのお子さんの話などで、パパぶりを彷彿。
 大日向先生は、ビデオを見ながらペンを片手に、ご自分のコメントを
 その場で作り、台本に書き込んでいく。しかも、そのコメントがリハーサル
 と本番で、決してぶれない。「もうこの番組、10年やってるんですもの」
 みなさん、TVで見るだけでは計り知れない集中力と瞬発力をお持ちなのだ。

 本番前に、大日向先生に質問をしたときの、お答えにも感銘を受けた。
 「センセイ、コメントで『SIDS』を入れたいんですが、日本名は『乳幼児
 突然死症候群』でいいんでしょうか」
 「そうね、その訳でいいと思うんだけれども、テレビをご覧になっている
 お母さんたちが不安になったりするといけないから、あまり怖い病名や
 現象の話は避けたほうがいいかも知れません」

 なるほど〜、長く子育ての現場にいらっしゃる、家族心理学のプロならでは
 のスキルであり、配慮である。伝えるべき情報と、伝えなくていい情報が
 ある。特に子育てという繊細な分野では、その配慮はとても大切。つい
 「事実」、「現実」としてシビアな話を無造作にしてしまいがちなカワサキ
 は、プロの姿勢を垣間見せて頂いた気持ちでした。肝に銘じよう。

 収録がすむと、デジカメ片手に、スタジオ内や出演者みなさんの写真を記録に
 残す。スタッフの皆さんも「しょうがねーなー。はは」という感じで見守って
 下さるので、ミーハー精神を全開にして、控え室のお弁当や、メイクした
 自分の写真など、「撮ってどうする」なものまでカメラに収めた。我ながら
 恥ずかしいヤツ。

 来た時の切迫感とはうって変わって、帰りは極めて上機嫌なカワサキであった。
 懸案の仕事を終えたという解放感と、何よりもスタッフや出演者の皆さんに
 親切にしていただいたというウレシさ。NHK教育、いいところである。
 「いやぁ〜、ホンット楽しかったです!番組、これからも楽しみに拝見します!」
 そうそう、これが言いたかったのだ。最後にこれを言わせていただけたのは、
 本当にラッキーで、光栄なことでありました。

 帰りのタクシー、カワサキは運転手さんにちょっと遠回りしてもらって、
 近くのスーパーに寄り、久しぶりにビールを買った。妊婦だけど、今日は
 特別である。キンキンに冷えたビールは五臓六腑に染み渡るうまさで、
 飲んだ途端にお腹の中の長男がグリングリンと動き回った。
 「そうか〜、キミも美味しいかぁ」
 なんじゃこりゃ、こんな苦いものヤメレ、と抵抗している可能性の方が大で
 あったが、ちょっと大目に見て頂きたい。あぁ、母はとにかく、疲弊したのだ。