分裂するバイリンガル脳。

【メルマガコラム】2004/01/30

またもや家族ネタで恐縮である。しかし、あまりにも興味深い生態のヒトビトが
 多いカワサキ家、ネタの宝庫なのでお許し願いたい。"National Geographic
 Channel"(とゆー、秘境探検番組ばっかりやってる米国のチャンネルがあるのだ)
 でも見ているつもりでお楽しみ下さい。

 オットを観察していると、バイリンガル脳は分裂する、と確信する。帰国子女
 (とかゆってカッコよさげだけど、タダの変人)のオットは、バッチリ日英
 2ヶ国語を駆使するのがご自慢。

 で、家ではケーブルTVのCNNとFOX TVなしでは生きていけないほど、英語漬けで
 テレビを見る。日本語吹き替えなんかになっていると、不快そうに音声切り替えを
 プチプチ押しているから、よほど英語が好きらしい。アメリカのコメディーなんか
 をガッハガッハ笑いながら見ているときは、何だか迫力を感じる。

 ミステリーなんかも、英語で読む。面白いと、一冊を一晩で読んでしまうのが
 本人の自慢だ。が、その頭も、どうしたことか分裂することがある。

 彼は壊れてくると(よく壊れるのだ。どこで修理したらいいのだ?)、新聞を
 読みながら、英語でブツブツ独り言を言い出す。英語で番組を見ているとき、
 家族が日本語でしゃべりかけても聞こえない。あげく、"What!?(何だよ)"と
 いいくさるので、繰り返すと、"Oh yeah, me too.(あっそ、オレも)"と、
 問いかけとはまるで関係のない返答をする。危険である。(でも何かに利用でき
 そうだ。『アタシ、指輪欲しいんだけど』とか言って。)

 実はオットの父にも逸話がある。20年も前、彼らがまだアメリカにいて、
 日本に一時帰国していたある日、神戸のマクドナルドで義父はカウンターの
 お姉さんに突然
 "OK well, two cheese burgers, four french fries and...That's it."
(え〜っと、チーズバーガー2つにポテト4つに……以上。)

 と、オーダーしたそうだ。本人、何の自覚もなし。おそらくマクドナルドの
 Mの字を見た途端にでも、彼の中の日英スイッチが英語モードに入ってしまった
 のだろう。で、振り向いて家族には「それでいいか?」と日本語で言ったそうだ。

 聡明なカウンターのお姉さんは、どうにか英語を聞き取り、この奇妙な日本人客
 のオーダーに対応してくれた。日系人か? からかっているのか? 何かビョーキ?
 きっと、いくつものクエスチョンマークが頭の中を舞ったに違いない。

 でも、カワサキ家の人ではなくても、ときどき分裂している人もいる。
 あるホテルで、借りていた傘をオットがフロントに返しに行き、
 「これ、お返しします」と言ったら、
 "Thank you very much, sir."と返事をしたホテルマンがいた。

 みんな疲れている。